医療事故調 / 神戸新聞社説
人々の生命や健康に影響が大きい事故が起こる分野では、事故の科学的調査と再発防止が大切なことは、申すまでもありません。
古くは海難事故です。遠距離大量輸送の手段が海上交通であった時代に海難審判の制度ができました。船舶航行の専門家が調査しないと分からないからです。海難審判は刑事訴追に先行します。このように科学的調査が優先されるべきという制度は既にあります。
では、正確な調査には何が必要でしょうか。
次に航空機事故の再発防止策を必要とする時代になりました。諸外国の航空機事故調査の時に必須とされる条件があります。それは調査は専門的に行うことに加え、処罰につながらないこと、です。
日本の航空機事故では、刑事捜査がまず行われ、関係者は刑事訴追を受ける可能性があります。航空機鉄道事故調査委員会の調査はその後に続くことになっています。刑事捜査は業務上過失を立件し訴追するためにあります。事故を予見できたか、結果を回避できたかを調べるのです。科学的調査ではなく、再発防止策とは無縁です。これで正確な調査と再発防止作がとられることになるでしょうか。
国際民間航空条約 ( ICAO ) では、事故調査は再発防止のためで処罰のためではないと規定し、その条約を日本も批准しているにもかかわらず、日本はそうはなっていません。
そして、医療の安全のために医療事故を調査する必要に迫られる時代になりました。医療事故の調査はどうあるべきでしょうか。
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神戸新聞は、医療側を叩く傾向の記事もあれば、時々、割と冷静正確な記事を書くことがあります。共同通信配信の記事では、共同通信の常ですが、医療側を叩く傾向にありますね。
神戸市医師会と神戸新聞で定期的に協議の場を持っているからだと思います。この社説もその影響があるようです。神戸市医師会は、厚労省第二次試案の問題点について、パブリックコメントでもそれを表明し、その後の日本医師会や厚生労働省への意見書を近畿医師会連合でまとめた時の文面を作っています。
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神戸新聞社説 2008.2.12
http://www.kobe-np.co.jp/shasetsu/0000832871.shtml
医療事故調/捜査とどう距離を置くか
診療行為で患者が亡くなったとしよう。病院はミスを否定するが、遺族は納得しない。公正・中立な機関が原因究明に乗り出し、結果を公表する。再発防止にとどまらず、医療への不信解消にもなるだろう。
これが、厚生労働省が設置しようとしている医療事故調査委員会である。
現在はそんな組織がないから、遺族は裁判で争うか、泣き寝入りするしかなかった。それが深刻な医療不信を招いたことは、いうまでもない。
そうした意味でも、信頼の置ける第三者機関を設けることに異論はないだろう。問題は中身であり、どんな機能を持たせるかである。ところが、厚労省の試案や論議に目を向けると、期待よりも医療現場の委縮につながらないかと心配が先に立つ。
試案によると、事故調は医師や法律関係者らで構成し、「診療行為に関連した予期しない死亡」を扱う。現在は医師法に基づき警察への報告を義務付けているが、これを事故調への届け出に一本化する。
個別の評価は委員会の下に設ける地方ブロックが行い、遺族からの申し出による調査も可能とする。遺体の解剖、診療記録の評価、遺族への聞き取りなどから、死因や死に至る経緯、要因を突き止め、調査報告書にまとめて公表する。
調査の手順を明確に示したのは評価できる。だが、調査報告書が刑事手続きで使用されることもあるとした点は、事故調のあり方にかかわる重大な意味を持つ。捜査との関係はより慎重にすべきだろう。
組織の中立性が疑われるだけではない。訴追の恐れがある中で、真実を話せるだろうか。責任追及に傾けば、真相究明という本来の設置目的から大きく外れる。
医療事故調の設置論議は、二〇〇四年の妊婦死亡事件がきっかけになった。帝王切開で出産した妊婦が死亡し、医師が逮捕された。「不可抗力ともいえる事例に結果責任だけで医療に介入するのは好ましくない」と日本医学会が抗議し、中立的な届け出機関の設置を求める声が高まった。
厚労省の試案は、届け出機関の設置には応えたが、捜査とどう距離を置くかという点で、なお議論の余地を残している。
事故調を厚労省の下に置けば、組織としての独自性が問われる。また、遺族に参加してもらうなら、どういう形がいいのか。こうした点についても、もっと踏み込んだ議論がほしい。
検討が始まって一年。法制化を急いで不十分なものにするより、医療への影響を見極めてからでも遅くない。
(2/11 08:51)
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